人財力の差・仕事力の源泉

「風土改革サポート塾」では、“真摯に向き合う”をテーマに風土改革を成し遂げた事例と、変化をチャンスに企業イメージを変えた会社の施策や対応を紹介します。

先ずは具体的なモデルを紹介する前に企業風土の特出すべき事項と改革推進の概要を述べておきたいと思います。

1.企業風土は人財力の差・仕事力の源泉

企業風土(文化)を一言で表現するなら、「企業イメージ&企業の価値観」であり、さらに、良い企業イメージとは「社員の働く姿と額に汗する笑顔が社会の評価となっている状態」と言えます。そして、これからは「どんなことをやるべきで、どんなやり方が喜ばれるか」、それを考え情熱的に取り組むことが風土改革です。

したがって、企業風土を認識するためには、「企業の価値と働き方が実際に社会からどんな風に評価されているか」ということを知ることです。何故かというと、企業風土は内部では認識しにくい構造になっているからです。

このため、競争力が低下すると他社の良いところだけに目が向き、準備のない方針や施策で、真似事の改善をしようとすることで、適正な対応ができない場合があります。

企業を永続的に存続するには、社員の意識と行動が常に変化に対応できるような準備が必要です。そしてそのための体制と一人ひとりの腕前を磨く風土になっていれば、仕事力の源泉は衰えることなく高まります。

2.社員の絆や自立心を高める

誇れる企業イメージを創り上げる(風土改革に手を付ける)とき、組織風土の正体を明らかにすることが重要です。悪しき風土の根源は、教化したり感化された状態が、いつのまにか慣習化して定着したものと考えられます。その源になるものとしては次のようなことが考えられます。

①過去からの共通体験

社員の提案を受け入れない。考えさせない。上下関係でのコミュニケーションがない。こういう企業では、指示、命令に反する意見を言わない、とか、悪いことに気づいても改めない、といった風土になっています。

②仕事の特性

組織内の馴れ合いと部門間でのけん制から、生産や営業などのグループごとに、異なった風土が醸成される場合があります。

③トップのリーダーシップ

ワンマンであったり、サラリーマン社長の場合は、朝礼暮改的に方針が変わることがあり、指示待ち風土が強まる傾向があります。

④組織の歴史

合併とか前職の仲間達だけで創った組織は、変化への対応を考えない特定の風土になる傾向があります。

⑤人材育成

教育の行き届いた組織は風土も良い。しかし、教育の行われていない企業はその逆になりがちです。

⑥制度・システムの関係

人事考課制度、ローテーション、管理システム等のあり方は、風土醸成に強い影響を与えます。

⑦外部環境の影響

大手企業のビジネスモデルや他企業の評判、社長の個人批判、業界の景気動向なども風土醸成に影響することもあります。

3.状況の変化

仮にトップの急逝、倒産の危機等では、水面下の行動が強まり、不安定な精神状態で混乱を起こし、社員の心理状態は必要以上に動揺します。それは経営活動の結果として醸成された、見えない経営資源(=風土)であったからです(風土の正体に関しては、月間経営労務2009年4月号~2010年3月号をご覧いただければ幸いです)。即ち、風土の本筋は血の通った人間が腕前を磨き、戦略や諸施策の実行力を高めていることそのものだからです。しかし、実際は企業トップが求めている本筋とは異なって、不本意な組織風土になっていることも多いと考えられます。何故でしょうか。風土は企業トップの個性や価値観が反映されると考えられます。そのためトップの力量以上には大きくなれないのです。従って、風土を改善していくためには、自社における組織風土の形成過程の中で、これまでのトップの考え方の方向性、そしてそれによりどのような問題を生じたのかを振り返る必要があります。

4.風土改善5つのポイント

好ましい風土とは、どのようなものであるかを考える場合、少なくとも次の5つの要素が秘められていると考えます。

①価値観の求め方

②危機感の不測

③信頼と不信の関係

④感謝の気持ち

⑤高いビジョン

まず、価値観の求め方ですが、組織に働いている人々が、心から仕事に打ち込んで互いが仕事を通じて生き甲斐の欲求が満たされることです。人間は、自分、あるいは他人に認められなければやる気をなくすものです。認められるチャンスのある風土が共通の価値と考えます。

第二は危機感の意識の差です。危機感がなければ現状を改善しようとする意欲や進歩への情熱が湧いてきません。仮に現状が良くても不測に備えた危機意識を醸成していくことが大切です。また、現状を改善しなければ、これ以上は良くならないという認識があったとしても、本気でなければ不安と不信だけが強まり、全社員の力を結集することは不可能です。常に信頼の保てる風土であれば、価値観の共有化が保てるかと考えます。しかし、常に変化する状況でも変わらない方針に基づいて運営されている状況では、不信感だけが高まります。

現状を意識して、今はどのような仕事の仕方、生き方に価値があるかを考える風土でなければ、組織としての結束力は弱いものになってしまいます。そうならないために意識しなければならない要素が、「感謝の気持ち」です。危機感を持ちながらも楽しく仕事が出来るのは、自分たちの力だけではない、周囲の人たちのおかげであるという気持ちを育むことです。更に、どこにも負けない「高いビジョン」を掲げることも重要です。「今どんなにいい状態であろうとも、もっと素晴らしいものを獲得したい」という望みを持ち続けることが大切です。なぜならば、その意欲が、企業や社員の夢と豊かさを支える原動力になるからです。つまり、「こんな企業で働きたい」、「こんな働き方で社会の評価を得たい」、という自尊心が満たされれば、今に満足するだけでなく、将来にも通用するだけの腕前を磨く機動力が強化されることになります。この5つの要素をバランスよく醸成することによって、人材育成を主体に企業が永続的に発展できる組織風土への取り組みが可能になるかと考えます。

5.人を活かす人、つぶす人の違い

コンサルタントの立場は、知識やアイデアを提供し、やる気を引き出し、考える意識を高めることにあります。

企業には、“人のやる気と能力を引き出す個人・組織”と、“人のやる気をつぶす個人・組織”があります。人を活かす個人・組織、つぶす個人・組織の差には、組織風土の問題があると考えられます。

それでは、「人を活かす組織とつぶす組織の差」はどこにあるのでしょう。

多くは、マーケットの縮小や競合の急増と考えられます。ここで大事なサポートは、「会社の目標を達成するために、リーダーを動かすテクニック」ではなく、「会社の目標達成を通じて、企業と個人が共に豊かさを分け合う環境をサポートする手法」でなければなりません。

以下は、人財を活用する上でサポートのない事例です。

①嫌われてるのに気づかない例

「ほら吹き上司」とは仕事がやりやすい?

某取締役は、感情の起伏が激しく、目立ちたがり屋で、会議の場で的外れな発言や締めの言葉を言いたがる。しかし、その発言は社長の言っていることをそのまま繰り返しているだけで、まったく味がない。そのことを社員は承知していて、某取締役が話しはじめると、会場内には「また、はじまったよ!」という冷ややかな空気が流れる。それでも部下は、さりげなく言ってのける。「某取締役のおっしゃるとおりだと思いますよ・・・・・おかげで、提案の議案もうまくまとまります。」そんな某取締役の性格を知っている専務は、組織の見直しを考え、某取締役が管掌する部門の部長に訊ねた。「某取締役が上にいると、やりづらいということないかね?」部長は即座に、いや、やりやすいですよ! 具体的な指示もなく意見もないから・・・。「つまり、ご機嫌さえとっておけば、なんでも承知してくれるのか?」「まぁそう言いことですかね。部長はニヤリと答える。

②知らぬは「本人」ばかりの例

オメデタイと言われている副社長であるが、社長はじめとする幹部たちの間では、任期を待たずに辞めてほしいとさえ思われている。人気のなさはここにある。

重要な案件を任せても何ひとつうまくまとめられない。自ら手を汚そうとしないで、部下に丸投げする。もちろん、責任もとろうとしないのが理由で、これに加えて、態度が横柄でいばり散らしている。こんな態度が、若い社員たちの間でも悪評である。更に副社長室に行くと仕事のこと以外の話題で、長時間も拘束される。これが仕事にまったく関係のない自慢話というから、呆れてものが言えない。だから、副社長の部屋には誰も寄りつかない。こんなことから、「なんであの人が副社長なの?」という疑問が、社内中に広がっている。ところが、恐ろしいことに、当の本人はまったくそんなことに気づいていない。

ある日、その副社長がお客さんと応接室で面会しているときに、お茶出しをしていた社員がとんでもないことを聞いてしまった。 「次の社長にはおそらく私がなると思っています。」とお客さんに向かって言ったというのである。私は思わず耳を疑った。しかも、得意満面に話したということだ。これを聞いたお客さんは、こう言ったそうである。 「そうですよね。こう言ってはなんですが、御社の社長様より、副社長様の方が人望も厚く、早くそうなってほしいと思っています」社交辞令かとは思うが、いい顔をするということは、なんと無責任なものかと考えさせられた一面でもある。

これらの事例は冷静になって客観的に考えてみれば、組織のしがらみでは有りうることです。組織風土という中には、こういう問題も潜在化していることも理解しておく必要があります。

大胆な改革を成し遂げた人は、威張り散らした態度をとることもなく、むしろ積極的に若い社員たちとも会話をし、現場の情報を得たり、気持ちを理解する光景が報道されていますが、改革のリーダーにはこのように心がけてほしいと願いたいものです。

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